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仔猫と狼
第16章 こぼれ落ちる








我に返った時には鳥居さんが私の手に両手を重ねて泣いていた。

















鳥居さんはゆっくりと床にしゃがみ込んだ。















どうしていいのかわからなくて、しばらくあたふたしたが、とりあえず私も鳥居さんの前に座ることにした。













再び鳥居さんより目線が下になると鳥居さんの表情がよく見えた。













泣いているはずなのに、どこか吹っ切れた表情をしていた。
















しばらくの間、涙が流れる音だけが私たちを包み込んだ。














その無言の空間がどこか心地よくて、幸せなような気がした。




















綺麗な涙を流し続ける瞳がゆっくり開かれると私を捉えた。

















「片岡…。」












先ほどのようではなく、今度はしっかりと私に向けられた。















自分に向けられた言葉が嬉しくて私は彼をしっかり見つめながら返事をする。















「はい。」

















「昨日はごめんな…。」















鳥居さんはそう、言葉をこぼした。
















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