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仔猫と狼
第3章 伝えたいのに…
「やる気がないならこの世界では、生き残れないよ。」
優しい言葉をかけるつもりが、なぜか本音を投げてしまった。
驚いた俺は、思わず山田を見てしまった。
驚いたのは、山田も同様で見開いた目をこちらに向けていた。
しかし、それは一瞬の出来事で、山田は、すぐにフォローにはいった。
「もちろん、やる気がないと続かないでしょう。しかし、美鈴さんには才能を感じたのです。」
俺の言葉を否定せずフォローし、なおかつ彼女がいかにアカデミックに必要であるかを熱弁した。
俺は、山田の仕事っぷりに関心し、ぼろを出さないように自分からの発言は控えた。
山田と、彼女の両親が事務的な話を始めたので俺は暇になり、片岡美鈴という女に目を向けた。
顔、スタイル、胸、すべてにおいて平凡だ。
確かに、先ほど聞いた声質は、悪くない。
だが、これといった声でもない。
声も小さいし、ぼそぼそとしゃべる癖がある。
だが、相手に聞こえるように努力をしている。
そのおかげか、滑舌は悪くない。
背中を丸め、自分に自信のないその姿にイライラした。
まるで…昔の俺のようだったから…。