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仔猫と狼
第1章 隣の家に
意味が分からない。
この男は、何を言っているのだ?
「誰が?」
「片岡さんが」
「何を??」
「声優にです。」
「な、なんでですか??」
「先程、失礼ながら片岡さんの家から歌声が聞こえてきまして。貴方の声に惚れてしまったのです。」
「…っ」
なんだ、この恥ずかしい発見をする人は…。
それに、何を私に期待しているのか。
「申し訳ありませんが、私には何もできませんので、お断りさせていただきます。」
私には、何もないのに。
「そうですか…。気が変わったら、こちらの電話番号にお電話ください。」
そう言って、山田さんは名刺を差し出した。
その名刺には、『アカデミック事務所』と書いてあった。
「え…?」
「どうかしましたか?」
まさか…
でも…
「もしかして…鳥居大輔さんが所属しているアカデミックさんです…か…?」
「はい。そうですよ。確かに、鳥居はうちの事務所所属です。そして、僕がマネージャーですが?」
「‼︎‼︎‼︎‼︎」
鳥居さん…
私の初恋の人。
そして、憧れの声優さん。
「…。」
「あの…片岡さん?」
「すこし、見学とかできますか?」
もしかしたら、会えるかもしれない。
あの時の御礼が言えるかもしれない。
あの人に追いつくことができるかもしれない。
「あ、はい!!大丈夫ですよ!」
山田さんは、笑顔でそう答え、事務所に連絡を入れた。
「片岡さんは、いつ空いていますか?」
「今週の土曜日なら空いています。」
「では、土曜日の午後にお迎えにあがりますので、アカデミックに行きましょう。その前に、片岡さんのご両親にご説明をさせていただきたいのですが。」
「それでしたら、土曜日の午前中ならどうですか?その時間帯なら両親もいますので。」
「分かりました。では、10時ごろにご説明に参ります。」
「ありがとうございます」
「こちらこそ、考えなおしてくださりありがとうございます。」