この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
仔猫と狼
第5章 謎のもやもや
あまりにも思い通りにいかないこの女にだいぶイライラしてきた。
さっきだってそうだ。
定番だが、車の助手席に乗せようとすると頑として拒否をしてきた。
「私は、マネージャーの補佐みたいなものですから。それに、ファンの皆様にも申し訳ないですから…。」っと、はっきり言われてしまった。
…くそ…。
…その女は今、後部座席で手帳をひたすら見ている。
その姿をバックミラーでちらちらと見ていたら、突然彼女の顔が青ざめ始めた。
「と…鳥居…さん…!!」
「どうした?」
できる限り、イライラしているのが伝わらないように返事をした。
「しゅ…収録の時間に30分も遅れています…!ごめんなさい…私のせいですよね…。」
それでも、イライラしているのが伝わってしまったようで、彼女は萎縮してしまった。
思い通りにいかない女のくせに…
さっきまでイライラしていたのに…
泣きそうなその姿に不覚にも触れたいと思ってしまった。
「あぁ、それなら問題ない。山田に連絡しといたから。」
「山田さんも忙しいのに…。みなさんに迷惑をかけてしまいました…。私のせいだ…。ごめんなさい…。」
今にも彼女の瞳から涙がこぼれそうだ…。
「…悪いのは俺だ…。お前じゃない…。」