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仔猫と狼
第6章 明らかな敵意
収録5分前にスタジオに駆け込んできたのは、明るい髪色の男性だった。
その男性は、鳥居さんと同様大人気声優の一人、結城真昼さんだった。
結城さんは、スタッフさんから大体の状況を聞き笑っていた。
公式のプロフィールには32歳と表記されているが、32歳には見えないほど若い姿だった。
「片岡さんだっけ?」
「あ、はい!」
収録の準備に入った皆さんの邪魔にならないように、端っこの方で座っていると、結城さんが声をかけてきた。
「この世界は、本当に大変だから、気をつけてね?」
「え…?」
確かに、声優という仕事も芸能界の一部だ。
嫌がらせがや、売れるまでの大変さやハードスケジュールなのは一度は憧れた世界。
一様理解しているつもりだ。
結城さんは、子役時代もある声優さんだ。
他の人より大変さをよりわかっている人…。
それでも、その言葉には、そのことを心配しているだけじゃないような気がした。
なぜなら、その目線の先にはこちらを静かに見つめる高瀬さんの姿があったからだ…。