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仔猫と狼
第6章 明らかな敵意
気がついたことを書けるように持ってきていたノートを鞄から取り出し、ガラス一枚挟んだ向こう側を見つめた。
録音室に入った鳥居さんの横顔は、今までで一番真剣な顔をしていた。
鳥居さんと会って、一緒に居る時間はたったの1時間と少しだけど、その表情が本当の鳥居さんのようで、初めて会った時の姿とはまるで違う気がした。
今日の収録は、夏から始まる作品のアフレコで主要なメンバーだけを先録りするらしい。
他に出演する方々は、一言二言だけだから後日録ることになると山田さんから聞かされている。
「ねぇねぇ。片岡さん。」
「あ、はい。」
アフレコの流れや録音中の様子をノートに必死に書き込んでいたら、突然監督だと思われる男性に声をかけられた。
「君、いい声してるね。さすが山田くんが発掘してきただけはある。」
「あ…ありがとうございます…。」
「君、猫の声真似とかできる?」
「は…?」
よくわからないまま褒められ、よくわからない質問をされた。
「猫…ですか??」
「うん。君の声をとても気に入ったんだ。たった3秒だけの猫の役をやってみないか??」
「!?」