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仔猫と狼
第7章 突然やってきた
監督の言葉に頭が真っ白になり、声がでなくなった。
「片岡さん、どう?」
「え…、あ…あの…え…。私…。」
状況が飲み込めず、まともな言葉が口からでてこない。
「単純な話だ。僕は君の声を気に入ったから猫の役をやらせてみたい。つまりこれは、僕が君にあげるチャンスだ。このチャンスを掴むか掴まないかは君次第だ。」
戸惑っている私に容赦なく選択を迫ってきた。
「わ…私は…。」
たった3秒…。
はっきりと突きつけてもらえた言葉で脳がフル回転して、冷静になってきた。
監督も言っていた通り、これはチャンスだ。
しかも、素人な私でもわかる大きいチャンスだ。
私がしたいのは、鳥居さんに認めてもらえる人間となって改めて感謝の言葉を言うことだ。
そのためには…
「私…。やりたいです。猫の役…やらせてください!」
「うん、よろしく。」
監督は真剣な顔から笑顔になり、音響担当に話を通し始めた。