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仔猫と狼
第7章 突然やってきた
最初の録音テストが終わったところで、なぜか片岡が録音室に入ってきた。
「どうした?山田からなにか伝言があったか??」
「いえ。私、猫の役をやらせていただくことになったんです。」
「は?」
なんのレッスンもしていないこいつがいきなり録音参加するのか??
山田か…?
いや、いくらなんでも山田にそんな権力はない。
じゃあ…
「監督さんが気に入ってくださったんです。」
「監督が??」
「はい。皆さんに頭を下げた時の声が気に入ったとおっしゃっていました。だから、チャンスをくださったんです。」
あの堅物で有名な監督が??
あのおっさん何を考えているんだ…
確かに、猫は重要なキャラクターではないが今後とも作品のなかに出てくる。
なぜなら、俺がやる役の飼い猫だからだ。
こいつは何も知らないのか…??
「私…なんのレッスンもしていないし、演技の勉強をしていたわけでもありません。でも、このチャンスを無駄にしたくないんです。鳥居さん…やらせてください。」
彼女は初めて会った時一瞬だけ見せたまっすぐではっきりと意志を持った瞳を俺に向けた。