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仔猫と狼
第7章 突然やってきた
テストを終えた後、私は人生初めて声をあてた。
鳥居さんのキャラクターが冷めた目をしたまま立っている所に、必死に鳴く。
『おなかがすいたよぉ。ごはんちょうだい。さむいよぉ。』
って、台本には必死な鳴き声としか書かれていない。
でも、ラフ画しか映っていない画面から、そうなんじゃないかって思った。
ボロボロの仔猫の姿は、自分のようで
…。
感情移入してしまった。
拾ってもらえた嬉しさに鳴く声をあてているときは、泣きそうになっていた。
そう…、あの日
鳥居さんに優しくしてもらえた日を思い出して。
私は仔猫に自分の姿を重ねていたが、冷静になってみるとおこがましいと反省した。
第一、私はあのような愛らしさはないし、生きようと必死になっていない。
私は、すべてを諦めていた。
二次元の世界だけど、仔猫には失礼なことをしたなと、考えていた。