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仔猫と狼
第7章 突然やってきた
無事に録音は終わった。
初めて演じた割には、猫の気持ちが伝わって来る演技だと監督は評価してくれた。
たった一言の演技だったけどこれほど楽しいと思えたのは、自身でもとても以外だった。
そして、さらに驚いたのは終わった直後、かすかに鳥居さんが楽しそうな表情を浮かべていたのだ。
どうしてだろう…。
その表情は、私と鳥居さんが始めってあったときのことをさらに思い出させた。
「お疲れ様。」
鳥居さんが声をかけてくれた。
覚えていてもらえていない悲しみと、猫に自分を重ねてしまった罪悪感に私は鳥居さんの目を見ることができなかった。
しばらく、鳥居さんと気まずい空気が続く。
そこに声をかけてきたのは、高瀬さんだった。
「ねぇ、片岡さん。」
「は、はい。」
「この後、時間あるかしら?」
「え…?」
「は?」
鳥居さんと私は、びっくりした声をあげるしかできなかった。