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仔猫と狼
第8章 勘違い
私の事を原石だなんて言われて同様してしまって、思わずトイレに逃げてしまった。
原石なんかじゃない。
むしろ、私は価値のない道端の石だ。
期待されるだけ、自分が価値のない人間だと理解している分、気持ちが沈んでいく。
「私なんて…。」
何もできないと理解しているのに、鳥居さんの言葉にすがってしまう。
『必要』と求めてもらえたことにすがって…。
自分の無に等しい存在価値だということを忘れかけていた…。
しばらく、そうやってぼーっとしていた。
「はぁ…。」
どれくらい経ったのだろう…。
いつまでも、トイレの個室にいられない。
それに、結城さんと高瀬さんが待ってる…。
そう…。高瀬さん…!
待たせてるんだった…!
私は、慌ててトイレから飛び出した。
「すみません…!」
「大丈夫だよ〜。それよりも…」
「それよりも、体調が悪いんじゃない?大丈夫?」
席には、いつ注文したのか、ビールを飲む結城さんと、同じくビールを飲む高瀬さんの姿があった。
「大丈夫です。お待たせしてしまいすみませんでした。」
「そう、良かった。」
少し柔らかくなった瞳の高瀬さんが答えた。
お酒で酔ってるのかな…?
「高瀬ちゃん、僕が聞いたんだよ〜。」
「結城さんがゆったりしてるのが悪いんだと思いますよ。」