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仔猫と狼
第11章 知りたくない
「はっ?帰るのか?」
「え?」
呆れられてしまったと思い、荷物その他もろもろをかき集めて鳥居さんに帰る旨を伝えたら意外な言葉を投げかけられた。
帰るのか?
それは、鳥居さんの中では私はささっと消えて欲しい存在ではないということが感じ取れる言葉。
私…鳥居さんに呆れられたわけじゃないの…??
「あの…。」
「なんでもない。」
私に怒っていないのか聞こうと思ったのに、それは鳥居さんの声で遮られてしまった。
「今度こそ、ちゃんと家まで送る。」
「あ…、はい。」
「…。」
気まずい沈黙が一瞬だけながれ、鳥居さんがソファから立ち上がった。
「そのままだと帰れないだろ。…まぁ、やったの俺だけど。俺の服貸すから、それに着替えてこい。」
その言葉に自分の姿を改めて考えてみた。確かに制服のシャツのボタンは取れて閉めることがままならず、髪もぐしゃぐしゃだった。
「あ…。」
このままでは鳥居さんの隣に立つにはあまりにもみすぼらしい…それに、鳥居さんに恥をかかせてしまう。
でも…
「申し訳ないで…」
「いいな?」
「…。」
「…。」
有無を言わさない目に素直に頷く。
頷いた私を見た鳥居さんは、寝室のクローゼットをあけその中から私でも着れそうなシャツを取り出し私に押し付け、寝室から出て行った。
「…はい。」
私は見えなくなった鳥居さんの背に静かに返事をした。