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仔猫と狼
第11章 知りたくない
閉められた扉をしばらく見たあと、私は素直に着れなくなったワイシャツを脱ぎ、渡されたシャツを着た。
髪型も手ぐしでどうにか整え、ましな姿にはなった。
鳥居さんが貸してくれたシャツは案の定ぶかぶかだった。
鳥居さんの部屋にあった鏡で己の姿を確認し、自らが着ているシャツを鼻先に寄せた。
「すぅーっ…。」
いい匂い…。
さっき、キスされた時に感じた匂いと同じ…。
これが鳥居さんの匂い…。
「…っ!」
なにやってんの私…!
これじゃあ、変態じゃない!
「でも…。」
さっきの鳥居さん…、少し怖かったけど。
それ以上に、抱きしめなきゃって思った…。
なんでそう思ったのかはよくわからない。
でもあの時の鳥居さんの表情は…。
すごく…すごく…!
コンコン
「!」
「着替え終わったか?」
「あ、は、はい!」
ノックの音に飛び上がった。
私の返事を聞いた鳥居さんは容赦なく扉を開いた。
「それなら大丈夫そうだな。」
「あの…。」
「行くぞ。」
鳥居さんは、私が言葉を発することを拒否するように背を向け歩き出した。