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電池切れ
第5章 32歳・・ルール違反

平日の昼間とあって、

海へと続く国道は空いていて

ものの30分ほどで目的地までたどり着いた。


海を臨む高台に建つカフェレストランで、

私達は少々照れながらそこここに座るカップル同様

白昼のデートを楽しんだ。



「なんだか・・恥ずかしいね。

 こんな明るい真昼間に悟と会うなんて」


「そうだよな、美月と昼間あうって、同窓会当日

 くらいだったもんな。

 あとは暗闇の中ばっか。

 ・・だからすごく新鮮に感じるよ」



コーヒーカップの取っ手を指でなぞりながら

悟も照れくさそうにしていた。




「ほんとはイケない事・・だよな、

 人妻と白昼のデートなんて」


上目遣いの悟の視線・・色っぽい・・


「そう・・だよ。でも・・したいんだもんね・・

 イケない事。でしょ?」



だが期待いっぱいの私に返ってきた言葉は

大きな声で叫び返したいほど

驚きの内容だった。



「じつはさ・・子供生まれたんだよ」


・・ハァ?なんだって?・・



あまりの驚きに最初は声が出なかったが

どうにかこうにかこう聞き返した。



「こども・・え?誰の?え?相手は?」



いったい誰と誰の、

いや誰かと悟の子だっていうんだよねってことは

そりゃ理解はできたけど・・



「彼女とさ、結婚するつもりではいたんだ。そろそろって。

 だけど先に子供デキちゃってさ。

 順番が逆になっちまった」


「ああ・・そういうこと・・」




シューッと風船から空気が抜けるように、私の中から

なにかが抜け出ていく。

いつかはこういう日が来るとは思っていた。

思ってはいたけど・・



「先月生まれたんだけどさ、男の子。

 彼女実家に戻ってあっちでお産したんだ。

 まだ実家にいるから今はオレ一人なんだよ」



平然と言ってのける悟にむかって押し殺した声で非難する。




「もしや彼女がいないすきに私とやっておこうってことなの?

 なによ、それ!」




周りの眼もあるから、静かな抗議となったけど、

心の中はおだやかじゃない。

彼女が大変な思いしてるのに、いないすきに他の女と・・

それってずるくない?








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