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電池切れ
第8章 50歳・・現実・・それでも



聞き取れなくて、その横顔をもう一度見た。



「もう・・立たないんだよ・・オレ・・」



「えっ?・・」




ぽかんとあいた口の奥、喉の奥がカラカラに乾いて

呼吸をしたらヒリヒリと痛んだ。

眼は、瞬きできず、乾燥してきた。



「あ・・え?・・それって・・」



・・立たない・・


その短い言葉を頭の中で反芻する。

それってもう・・

ダメってこと?

夫だけじゃない・・

悟までも・・?



「あのさ・・じゃあ奥さんとは?

 それもだめなんてこと・・ないんでしょ?」



慰めかよ、と薄ら笑いを浮かべて



「かみさんとなんか、ずーっとしてないよ。

 正直に言うと美月以外にも女がいた。

 その女とはちょくちょくやってたけど・・

 ここ1年くらいまったくダメで・・

 逃げられちまったよ、

 役立たずって怒鳴られて・・」




そう言って下を向く悟・・

私の眼にはだんだん涙さえたまってきた。



楽しみに・・

悟に抱かれるのを楽しみにしてきたのに・・

そんな・・

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