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~大人のための官能童話集~
第3章 二幕‥赤ずきんちゃん
 

「ふん、それは良い心掛けだな」

「はい……ですから、どうか、あの子だけは見逃してやって下さい」


あの晩と同じように椅子から床に腰を下ろし、額を床に擦り付けるように土下座をする。

心からの最後の願いだった。


「そうか……そこまで言うなら、見逃してやっても良い」

「!」


柔らかい声色が降りかかり、期待に母親は顔を上げた。

――が、


「ふ……なぁーんてな、俺がそんな馬鹿げたことを言うと思ったか?」

「……っ」


やはり、母親が考えるほど奴等は甘くはなかった。

いやだからこそ、それを見越して娘を森へと逃がしてやったのだ。

己の判断は間違っていなかったと、心の中で母親は安堵の息を漏らした。


「そうですか。ですが、娘はここにおりません」

「なに?」


母親の言葉に、途端に男の機嫌が悪くなっていく。


「貴方達には到底見つからない場所に娘はおります。ですから――」


娘を探し出そうとしても無意味だと続けようとした。

しかし、


「クックックッ……」


男の一人が不敵に喉を鳴らして笑う。

そして、信じられないことを母親に告げた。

 
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