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~大人のための官能童話集~
第3章 二幕‥赤ずきんちゃん
「アンタの考えてることなんて、お見通しだ。何故なら、少し前からこの村へ偵察を何人か寄越していたからな。だから娘が今日、森の方面へと向かっているのも把握している」
「!!」
鉄板で頭を殴られるような衝撃が母親の頭に走る。
自分の考えが浅はかだったばかりに……
たった一つの希望でさえも、己には許されないのか。
もし本当に神というものが居るのならば、なんと慈悲の無いことか、と。
己の境遇に母親は絶望した。
「そ、んな……」
「森の中に一軒だけ小屋があるのも知っている。大方そこへ逃がすのだろうと踏んでいたんでな。今頃は偵察の何人かがそこでアンタの娘を待ち伏せていることだろう」
(ニーナ……)
もう涙も出てこない。
魂を無くしでもしたかのように、母親は茫然自失とその場でうなだれていた。
「さあ、これで思い残すことも無いだろう? アンタにはアンタの役目がある。……連れていけ」
「へい」
男の後ろで控えていた二人の内の一人が、母親を連れていこうと腕を掴んで引き上げる。
そこへ。
「な、なんだ? お前ら、俺の妻に何をしている?」
階下の物音に目を覚ましたのか。
眠っていたはずの夫が、目の前に立っていた。