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~大人のための官能童話集~
第3章 二幕‥赤ずきんちゃん
「なっ……」
窓から差し込む陽の下。
現れた青年の姿に、男達だけでなくその場に居合わせた全員が息を呑む。
頭に生えた獣の耳に、背中からは逆立った尾が警戒心を露に揺れるその姿。
赤く血に濡れたようなルビーの瞳は、異様な光を放ちながら男達を睨み付けていた。
(な、何故……村のふもとに)
見覚えのあるその姿を目で捉え、驚きに母親は目を見開く。
村では“化け物”として恐れられる存在。
その姿を母親が見たのはニーナが森に迷いこんでしまった、遠い過去のあの一度だけ。
後に何度かニーナが森に行こうとした時もあったが、母親は頑なに娘の行動を阻んだ。
結果。
歳を重ねるにつれて……ニーナは森へ行くのを諦め、きっと今では幼い頃の記憶など忘れてしまっていることだろう。
それが何故かは分からないが、ここに彼は現れ……どうやら自分達を助けようとしてくれている。
(一体……どうして……)
「ば、ば、化け物だ…!!」
予想していなかった者の登場に男達は情けないほど脅え、異形の姿にガタガタと震え出す。
「……あの子を……ニーナの家族を傷つける奴は許さない」
青年の口から押し殺した声が漏れる。
――その時点で、勝敗は既に目に見えていた。