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~大人のための官能童話集~
第3章 二幕‥赤ずきんちゃん
青年――否、シルヴァは。
微かに匂うニーナの残り香を頼りに、森の中をひたすら走っていた。
理由はもちろん、彼女を助けるため。
「ニーナ……」
ニーナと出会ったあの日から、結局彼女自ら森を訪ねて来てくれる日は無かったが……シルヴァがニーナを忘れたことは一日も無かった。
笑顔や泣き顔、恥ずかしそうに照れたしぐさ。
たった一度。
会っただけ。
けれど、何故か忘れようにも忘れられなかった。
――だから、彼は年に一度だけ。
寒い冬から暖かくなる春の季節。
山からふもとへと下り、ニーナを一目見ようと村へこっそりと訪れていた。
会話をせずとも、彼女の成長を見れるだけで満足していた。
一年…二年…と、経過していくごとに。
だんだんと大人びて、ますます可愛らしくなっていく彼女を見るたびに……いつかは他の男に見初められ、夫となる男の元へ嫁いでいくのだろう。
そして、自分一人だけが置いていかれる。
そんな風に思ったのも、一度や二度ではない。
……だが、ニーナが幸せになれるのならば。