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~大人のための官能童話集~
第4章 三幕‥赤ずきんちゃん◆
何故だろう。
以前も自分はこうして、何者かに助けられた気がする。
あれは……いつだったか。
遠く、幼い頃のニーナの記憶の中で、
だが、その時の“彼”はまだ、こんなにがっしりとした腕を持っていなくて……二人で倒れるように地面に寝転んだ。
けれど、今は――――…
「大丈夫か?」
「あ……」
優しく労りの声が上から囁かれ、床に落ちる寸前で抱き留められた体。
自然と目の前の人物を覗き込む形になり、ようやくニーナは気配の持ち主が誰であるのかを知った。
「……シルヴァ」
「!」
自然と口を吐いて出てきた名前に、目の前の彼――否、シルヴァが目を見開く。
「……覚えていたのか」
「ええ……また、貴方に助けられたのね」
肩まで伸びた透き通るような銀の髪に、前髪から覗くルビーのような真っ赤な瞳。
スッと通った鼻筋に薄い唇からは犬歯が僅かに覗く、整った造形。
頭からひょっこりと生えた犬のような耳に、背から垂れ下がる獣の尾。
幼い頃に目にした姿の面影を残しながら、体つきはすっかり青年となった彼。
(どうして……私は、忘れていたのだろう……)