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~大人のための官能童話集~
第1章 序幕‥赤ずきんちゃん
「……お前、恐くはないのか。俺が」
「え?」
唐突に問われて、ニーナは首を傾げる。
確かに。
人間ならばあり得ないその“耳”
よくよく観察してみれば、背後には毛深い尻尾まで揺れている。
それを抜きにすれば、姿形は自分とほとんど変わらないようだが……彼はもしかすると人間では無いのかもしれない。
だからと言って、ニーナは“恐い”とは思わなかった。
「恐いなんて思わないわ。だって、あなたは私を助けてくれたもの」
『それに』と付け足して、ニーナは続ける。
「あなたの瞳はとても綺麗……まるで宝石みたい」
「……!」
爪先で背を伸ばし、彼の瞳を真っ正面から覗き込む。
ビクリと肩を震わせ、少年は警戒心を全身に漂わせていたが……ニーナを突き放そうとはしなかった。
「あの……もし良かったら、わたし…あなたの名前が知りたいわ」
「俺の……?」
「ええ、せっかくこうして出会ったんだもの。出来るならわたし、あなたとお友達になりたい」
「とも…だち……」
初めて知った単語だと言わんばかりに、しみじみと復唱する少年。