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~大人のための官能童話集~
第1章 序幕‥赤ずきんちゃん
「そう! お友達! ね? だから、まずはあなたの名前を教えて」
「俺……俺の名前は――」
無邪気なニーナに請われるまま名乗ろうとした少年だったが、不意に口をつぐむ。
それどころか、茂みに隠れるように背を屈め周りを窺う素振りを見せる。
「? どうしたの?」
「……誰か、来る」
木々が生い茂るその先。
少年が見つめる奥から、微かに人の声が聞こえてくる。
「……ナ、ニーナ……」
「!! この声は……」
こちらへと向かって来ているのか、気配が徐々に近づいてくる。
次第に微かに聞こえていただけの声も鮮明に聞き取れるようになり、ニーナの疑いは確信に変わった。
「ニーナ! どこにいるの? 返事をしてちょうだい」
「ニーナ! どこだぁ! ニーナ!」
「お父さん…お母さん…」
父と母が自分を探しに来てくれたのだ。
嬉しさの余りすぐにでも駆け出してしまいたくなるニーナだったが、少年の存在を忘れてはならない。