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バックヤードの誘惑
第4章 昼の顔と夜の顔
6時に紀子が帰っていくと、店の中には
美佐江と和樹の2人きり。
連日・・なんてことあるわけない、
とは思っていても、
体は何となく硬直し、ソワソワし始めた。
だが和樹のほうは、全く反応しない。
昨夜のやり残した棚卸を一人で淡々とかたづけている。
その姿にチラチラと視線を送りながら、
時折入ってくる客の相手をした。
中高年向けの服を売っている店だから
6時過ぎたこの時間帯はあまり客は来ない。
だからといって油断はできない。
見られて困るようなことを店先でするわけにはいかない。
昨夜の出来事は夢だったんだ・・
そう自分に言い聞かせて、次の客を待ちながら
和樹の仕事を黙って手伝い始めた。
閉店時間になるとすぐに、美佐江は和樹に声をかけて
シャッターを下ろした。
鍵をかけ、ほこりよけのシートをかけてから
美佐江は和樹に挨拶をした。
「お先に失礼します、お疲れ様でした」
控室のドアに手をかけると、後ろから突然
和樹が抱きついてきた。
美佐江の体はすっぽりと和樹の体に包まれる。
昨夜のように身をよじることもなく、
隙間なく男の体に背中を密着させる。
美佐江の首筋に唇を滑らせる和樹のせせら笑う声が
針のように刺さる・・
「待ってたんだろ?こうされるの・・」
「そんなこと・・ありません・・」
そう言った手前、少しだけ身をよじって抵抗したが
それ以上の動きをすることはなかった。
美佐江の体は和樹から離れなかった。
「出勤してきた時、がっかりしただろ?
ぜんぜん普段通り、なんにもなかったみたいなオレの態度に。
う~ん、一応オレもオーナーとしての
立場は大切にしなきゃならないからね。
深町さんがいる時には
たとえ彼女が見てなくたってそんなそぶりは見せないよ」
他の従業員がいる時間はたとえ
2人きりになっても素知らぬ顔・・
当たり前といえばそうなのだろうが、
彼ほどうまくは演じられない・・
美佐江はせつなさにうなだれた。
「こうやって・・
完全に2人きりになってから・・
ここからが本当のオレ・・」