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若社長と秘書子の攻防
第1章 ファーストラウンド



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 普段は残業上等な社長が、退社時間と同時に会社を出る。もちろん私も同行せよとの命令で、こんな早くに会社を出るのはいつぶりか。


 真夏の太陽は夕刻になっても衰えを知らず、黄色い光がオレンジ色に染まってもアスファルトの照り返しは容赦ない。


 社長の運転で車の移動で陸奥屋百貨店に向かっている私には、太陽と気温のドSっぷりは関係ないのですが。


 というより、車内の重たい空気のほうが私には辛い。


 乗り込んですぐ、待ってましたとばかりに今朝の話題に触れてきた。


「ところで。僕のネジを探すとか言ってたな? 見つかったのか?」


 きた! きたきたきたきた! きましたよ!!


 そんなもの見つかるはずないじゃない。そもそも探してもいませんが。


 そんなこと言えば社長の思う壺。言いくるめられ、光線を浴びせられ、弱ったところに付け込む。


 一見汚ないやり口で、数々の業績をおさめてきた貴方のやり方、何年近くで見てきたと思ってるのかしら?


 だから私は用意していた台詞をスラスラと言った。


「いいえ、社長。どうやら初めからお壊れになっていたみたいです。見付ける物が無ければ、いくら私でも探すのは不可能です」

 ピッチャー!


 プロポーズらしきものをした男とされた女の間に流れるべきでない雷が再到来。


 表情はもちろんどちらも冷笑です。







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