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若社長と秘書子の攻防
第1章 ファーストラウンド



 陸奥屋の屋上で、はっぴを着た下柳社長に簡単な挨拶と労いの言葉をかける社長を見守る。


 加賀美社長と下柳社長は若くして同じ社長という立場に立った二人で。下柳社長は殺人光線を発射はしないでしょうけど、通じるものはあるのでしょう。暫く二人で会話をしていた。


「少し見て回るか」


 下柳社長との挨拶を終えた社長はそう言うと、私の返事を待たずに歩いて行く。


 別にいいですよ? 雇われの身の私に拒否権なんてありませんものね。


 お世話になった他ならぬ陸奥屋さんの最後の晴れ舞台を見て回るのは、私だって感慨深いものがありますし。


 でも。


『見て回る』? 射的に金魚すくいなど催しを一つ一つやるのは、見て回るとは言いません。


『あの時』もそうだったけど、社長は何気にこういう遊びが好きだ。


 遊びだけじゃなく、屋台で売っている食べ物も余すことなく買っていく。


 買っては遊び、遊んでは買いを私が止める間もなく繰り返す社長でしたが、流石にある1ヶ所では止めに入った。










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