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若社長と秘書子の攻防
第1章 ファーストラウンド
「甘いもの、お好きじゃなかったですよね?」
接待で社長と食事を共にしたこともあり、好みは把握している。コーヒーはブラックですし、食後のデザートは召し上がらない。
てっきり嫌いだとばかり……。
「相川が食べるだろ?」
「は? では私の……?」
予想だにしていなかった返答に、瞠目してしまう。
「それ以外なんだというのだ」
「いえ、でも……。まさか私の分だとは……」
「昔、食べてたじゃないか」
またも予想だにしなかった言葉に、鉄壁の鉄扉面が崩れそうになる。崩れそうになってぐっと堪えた。
「今さら昔のことなんて……」
どうして触れるんですか?
本当に今さらだわ。
『陸奥屋』と『夏祭り』。その2つだけでも古傷が疼いて仕方ないのに。
わざわざ傷口を広げるようなこと、社長にだけは言って欲しくなかった。
12年もの長い間。タバコにしたらワンダース、干支にしたら一回り。
ずっと、ずっと封印してきた想いが、私にとって最悪のシチュエーションと社長の言葉で溢れ出してしまった。
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