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若社長と秘書子の攻防
第1章 ファーストラウンド



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 12年前。どういう用事でかはもう思い出せないけれど、夏の暑いあの日、私はここ陸奥屋に訪れ、そして偶然にも社長に出くわした。


 陸奥屋に貼ってあった近所の河原でやる夏祭りのポスターに見入っていたとき、声をかけられたのはよく覚えてる。


「行きたいのか?」


「加賀美先生!?」


 自宅以外で会うのは初めてで、とても驚いていた私に再度行きたいかと問うてきた。


「……いえ」


 子供らしさがあまりない私だって、遊びたい盛りの15歳。遊びたいに決まってます。


 それでも首を振ったのは、私は受験生で、この人は私の家庭教師。それも鬼のと前に付くくらい厳しい先生なのです。


 夏祭りに行きたいと言えば、その後どんな仕打ちが待っているか……。


 口が裂けても行きたいと言えるはずなんてないでしょう、と考えていると。


「勉強は息抜きとのバランスが大事だ。ご両親には僕から連絡しておくから行くぞ」


 行くって……先生と? 私が? 二人で!?


 有無を言わせぬ彼は、何がなんだか混乱している私を、あれよあれよと夏祭りの会場まで連れて行った。




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