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若社長と秘書子の攻防
第1章 ファーストラウンド



 当時から社長は……『先生』は。私にとって、何が出てくるか分からないビックリ箱のような人。


 大抵は殺人光線しか出てきませんが。


 ふとした時に見せる少年っぽさ。気難しさの中にある柔軟さ。分かりにくい優しさ……。


 冷めた性格の私の心を騒がせるーー唯一の存在。


 夏祭りの仕上げに上がった、色とりどりの花火。


 夜暗を彩る、宝石箱をひっくり返したようなキラキラが、空を見上げる先生の瞳に映り込む。


 次の瞬間。


 気が付けば私は背伸びして、先生の頬にキスをしていた。


 どうしてそんなことをしたのか……衝動的だったとしか言えません。


 僅かに見開かれた先生の瞳には、驚く私が映ってた。


 そこからどうやって帰ったのか。先生が送ってくれたのは間違いないですが、記憶は曖昧で。


 確かなのはキスをしてしまったことと……それを無かったことにされたことだけ。


 次の授業も、その次の授業もそのまた次も……。


 彼はキスについて触れてこなかった。







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