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若社長と秘書子の攻防
第1章 ファーストラウンド


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「佐和〈サワ〉! 聞いたよ! 社長からプロポーズされたんだって!?」


 社員食堂で昼食を摂っている私の元、同期のナオがトレイ一杯に食事を乗せて目の前までやって来て、テーブルにドンっとトレイを置くと食器が踊った。


 悪夢のような会議室での一件は、朝一に行われた会議のあと数時間で瞬く間に社内に広がったらしい。


 廊下を歩けば噂好きの女子社員が無遠慮な視線を投げるし、秘書課のお局先輩には刺々しく扱われるし。


 まあ今に始まったことじゃない。私は悪い意味でこの社の有名人なのは自覚している。


 それもこれも全てあのバカ……若社長のせいなのだが。


「あれのどこがプロポーズなのかしら?」


「そうカッカすんなよー」


「カッカ? してないわよ?」


 ほうら、見てごらんなさいよ。私の周り半径5m圏内の人が、私の冷笑で凍りついてるじゃない。


 カッカどころか冷え冷えとしてるでしょ? 暑い夏にはもってこいの、エアコン要らずの自家製クーリングオフよ?


 ナオはブリザードに馴れてしまってるのか、冷笑に負けず話題を続けた。






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