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若社長と秘書子の攻防
第1章 ファーストラウンド



「社長。お仕置きとかどうとか言う前にですね。確認すべきことがあるんじゃないでしょうか?」


 キスの余韻やあれこれでドキドキは収まらないが腹も立ってきて、鉄扉面をどうにか取り戻す。


「確認、ねえ? なにをだ?」


「私の気持ちです。確認もなしに部下にキスするのは、セクハラですよ?」


 過去の過ちを棚に上げて責め立てる。それも鼻で笑われ一蹴とか。


『僕を誰だと思ってるんだ?』と眼だけで言うのはやめてもらえないかしら? ほんとにこの社長はっ!


「そう、キミは僕の部下で社長秘書だ。秘書〈キミ〉は社長〈ボク〉を一身に支え、社長の不利益になることはしないものだろ?」


「そ、それがなにか?」


「会議の場で僕はキミにプロポーズしたんだ。今日1日で社内全体が知るところになってただろ? キミが断れば、僕の評価が下がると思わないか? あの返しは今のところ恥ずかしさの裏返し、ということになってるからそのつもりで」


「ま、まさか……」


 この人……私が逃げられないようわざと?


 外堀から埋めやがったってことかしら?


 ど……どれだけ腹黒なんですか、この若社長は……!?


 私、なんて人を好きになってしまったんでしょう。


 感心するやら呆れるやらで、テールランプに照される横顔を見詰めた。








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