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若社長と秘書子の攻防
第2章 セカンドラウンド




  もう、どうにでもしやがれってんです! と、まな板の上の鯉の気分でいれば。


  社長の次の言葉で、お釈迦様でもまな板でもなく、私は絞首台に立たされていたのだと気付いた。


「父の容態が芳しくない。だから近々マンションを引き払う予定だ。それに手間隙かける時間が惜しい。てっとり早く巣に引き込んでしまおうかと思ってな」


  言いながら社長はスーツの上着を脱いで私に渡す。


  受け取りながら、喉の奥がギュッと締め付けられた。


「……社長が急がれてるのは、お父様のご容態のせい、ですか?」


  社長を見られず、焦点の定まらない視線は部屋をさ迷う。


「それもある」


  ギュッとまた喉が絞まる。


「左様……ですか」


  胃にも鉛が落ちてきた。


  いや、堕とされた。深い、深い闇へと。






  ──社長は徹底した効率主義だ。それは女性に対しても同じなのだろう。


  前社長にもしものことがあれば、名実共にわが社の顔は加賀美理人社長となる。


  そうなると、社会的地位を揺るぎないものにするには、家庭を持つことも手立ての一つ。


  頭のお堅い老兵は、家庭を持たない若造を信用しない……なんて話も大っぴらに話題に出ずとも珍しくない。


  会社を背負う立場として、家庭を持とうとするお考えは当然なのでしょうね。








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