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若社長と秘書子の攻防
第2章 セカンドラウンド


「……社長。プロポーズお受けいたします」



 低く呟けば、当然だとばかりの一瞥をされる。


 予想通りの反応ですね。この方に両手を挙げて喜びを表して欲しいだなんて、期待すらバカバカしい望みなんでしょうね。


 そもそも社長にとって私との結婚は、会社での契約と同じようなものだ。自分にどれだけ有益か。その一点のみで、愛だの恋だのなんて女を惑わす口先の言葉でしかない。


 ころっと騙されそうになった私がバカだっただけ。


「ですがひとつだけ条件があります」


 契約ならば、こちらの条件を出してもいいはず。


 すでに破れた初恋はボロボロの散り散りで、残った鋼鉄の仮面という武器を手にこの先を生き抜くしか私には道はないのだ。


「言ってみろ」


「結婚はいたします。ですが今後一切、私にキスはしないでください」


「……なんだと?」


「キスはしないでください、と申したのです」


 再度強調して、だけど単調に仕事の報告のときのように言う。


 都合がいいと思われている女なりにも譲れないものがあるんですよ?


 社長が私の言動で一喜一憂してくれないのは充分に理解しました。だったら私もこの鉄扉面を生涯貫くために、この条件を出しましょう。







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