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若社長と秘書子の攻防
第1章 ファーストラウンド



 社長室からの内線で呼び出され、すぐさま社長室に向かった私を、重厚な造りの机の奥にある立派な椅子に座る社長が待ち構えていた。


「お呼びでしょうか?」


 今朝のことで呼ばれたんじゃなかろうかと、内心はかなり身構えている。


 ナオに鉄扉面と言わしめるだけあり動揺が顔に現れないのでそうは見えないでしょうが、相手は私を上回る鉄扉面の上、社内でも有名な冷血漢。


 隙あらばざっくりひと刺しにされてしまう。どこにも隙を作るまいとすまし顔でいれば。


「頼んでおいた資料はどうなった?」


「資料、ですか? 今週中にとのことでしたが、本日中にはお渡し出来ると思います」


 普通に仕事の話でしたか。身構えてた私の緊張感、お返し願いますかと言いたい。


「……そうか。で? やる気はあるのか?」


 眼だけで殺せそうな、涼やかな視線から光線が襲い掛かる。


「上司から要望がある前に提出するのは基本だろう」


 即座に第二段発射。この光線で何人の死人が出ただろうか? 実際には死亡してないまでも、心は折れるどころか粉砕ものでしょうね。


 私は社長秘書になって3年……出逢った頃から数えれば12年越しの攻撃で、いちいち粉砕してられないから軽くかわしますが。


「申し訳ございません。以後このようなことがなきよう気を付けます」


 私に落ち度がないのは一目瞭然だし、ここまで理不尽な痒い所先回りは要求された記憶はないが、反論や言い訳しようものなら光線連発が関の山。


 ここは素直に謝って早々に退散するのが得策でしょう。







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