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若社長と秘書子の攻防
第3章 ラストラウンド
私はお二人のやり取りを邪魔してはいけないと、一揖して部屋を出て、コーヒーの準備に取り掛かる。
吉崎様はミルクをたっぷり入れたコーヒーがお好みで、社長はもちろんブラックだ。
そもそもなぜ一介の営業に社長自ら対応をなさっているかというと、まだ社長がバリバリの営業マンだった頃、彼女と組んで仕事をしていたからで。
加えて吉崎様も社長と同じお立場──つまり、吉崎コーポレーションのご令嬢なのだ。さらに加えると、社長とは大学の同期生であり、古くからの知り合いということもあり、仕事がしやすいからと彼女たっての願いで、社長職に就かれてからも窓口を引き受けていらっしゃるのです。
コーヒーの準備を終え、再度社長室へと入室する。
「──なーに言ってんの。これでも随分譲歩してるわよ? これ以上価格下げて、うちの会社潰す気?」
「まだ見直しの余地はあると思いますが? たとえば──」
テーブルに広げた資料の邪魔にならないよう、そっとコーヒーを置く。
吉崎様も社長の殺人光線に怯まない、貴重な人だ。
あの眼で睨まれ、真正面から光線を受ければ、大抵の人は引き下がるのに、真っ向から立ち向かう度胸は私でも感心してしまうものがあります。
私はまた静かに一揖してその場を去った。
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