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若社長と秘書子の攻防
第3章 ラストラウンド



 私は秘書室に戻ると、頼まれていた資料作りに取り掛かる。


 と、なにやら先輩お局様方がひそひそと話し、鬱陶しい視線をチラチラ投げてくる。


 あれだけ灸を据えてやったのに、女とは図太いものでもう復活なさっているようで。私と社長が婚約したのが余程悔しかったのでしょう。あからさまな陰口はされなくなったものの、地味なひそひそ攻撃とチラチラ視線という新技を使ってくるようになられました。


 実害はないですし、気にしなければいいのですが……非常に鬱陶しいものがありますよ、先輩方?


「なにかおっしゃりたいことでも?」


 視界と聴覚に入る鬱陶しさに耐えかね、冷笑を浮かべて問う。


「いーえ、べつに? ねぇ?」


 二股がどちらにもバレ、どちらとも最近破局した正岡さんが若月さんに同意を求めると、彼女も「うん、べつに?」と頷く。


「べつに」という言葉は、気にして欲しい方がつかうフレーズだというのを知らないのでしょうか。


 私は小さく嘆息し、無言で仕事に戻る。するとやはりもっと追求して欲しいのか、さきほどよりも大きめのひそひそが始まる。






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