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若社長と秘書子の攻防
第3章 ラストラウンド



「吉崎様、本当にお綺麗よね」


「ええ、どこぞの誰かと違って華があるっていうか」


「そうそう。どこぞの誰かと雲泥の差よね。ご自分を磨いていらっしゃるところとか、憧れるわぁ」


 ああ、そういうことですか。遠まわしに私が地味で華がない、とけなしたいのですね。


 いいですよ? 自覚はありますから。寸胴の体型や化粧映えのしない顔に、ブランドの洋服やメイク道具にお金を費やすよりも将来を見通し、堅実に貯金するほうがよっぽど有意義ですし。


 でもですよ? それを直接指摘するのではなく、誰と特定しない言い回しでヒソヒソと話すとは……また痛い目見たいようですね。


 私は静かにブリザードを漂わせ、先輩方の脛の傷を脳内でアップロードしていると。


「社長と吉崎様って学生時代お付き合いしていたのよね? あんなにお綺麗で家柄もよくて、仕事もできる方よりアレを選ぶなんてねぇ」


 若月さんに耳打ちをする正岡さんの言葉で、彼女たちにその手を伸ばそうとしていたブリザードは動きを止め、跳ねかえって私を固まらせた。


 社長と吉崎様が……?


「アレなんて失礼よ。一応未来の社長夫人に向かって」


「ああ、そうだったわね。でも……」


 チラリと思わせぶりな視線を正岡さんは私に寄越した。








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