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若社長と秘書子の攻防
第3章 ラストラウンド




 意気込んで社長室の前まで来たものの、緊張で膝が震える。


 もし踏み込んだとき、お二人の着衣に乱れたあったら……心折れそうです。


 だけど、戦わずして戦場を去るだなんて、私の信念に反します。たとえ血の一滴も残さぬほどボロボロになったとしても、戦って敗れるならば本望というもの。


 ここは気合を入れ、扉を強く叩く。


 決して情事に耽っているかもしれない二人に、訪問をアピールしているわけではないですよ。そうです、単なる気合いなんですから!!


 防音のため、中の声や物音が聴こえず、僅かに間を置く。


 これだって、服を直す時間を待っているわけじゃないですから。打ち合わせ中に無断で入るのは、社会人としてどうか、となけなしの常識があるからですからね!!


 ええ、そうよ……と、言い聞かせていると、ガチャとノブが捻られ、中から開けられる。


「どうした?」


 着衣も髪も乱れなしの社長が私を出迎え、内心ホッとする。


「打ち合わせ中に申し訳ありません。急を要する用件がございまして」


「急……? トラブルでもあったんですか」


「いえ、社長にではなく吉崎様にです。申し訳ありませんが失礼いたします」


 扉の横に立つ社長を横切り、背筋を正して吉崎様が座るソファーの近くに立つ。


「私に用事って、社から連絡でもあった?」


 組んだ脚の細くて色っぽいことで……と、敵兵に感心している場合じゃありませんね。


 私はお臍の下で両手を重ね、一礼をした。







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