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若社長と秘書子の攻防
第3章 ラストラウンド



 眼で殺そうとしても無駄ですよ。今の私は無敵なんですから。


 鋼鉄でコーティングされた肉体を貫くのは、強力な殺人光線でも不可能です。


 社長にも一礼をして去ろうとすると、がっしりと腕を掴まれる。


「お叱りならのちほどゆっくりとお聞きしますから、社長は仕事に戻られてください」


 社会人としてあるまじき行動に走ったのだ。最悪クビも覚悟はしている。社長の秘密を匂わす発言もしてしまい、当然ながら婚約も破棄されるでしょう。


 イチから出直し、仕事も恋も再挑戦する覚悟でここまで来たのだ。どんな罰が下ろうと、悔いはない。


 私はやんわりと社長の手を押し戻せば、今度は腰をがっちりホールド。


「吉崎。すまないが僕に急用ができたようだ。出直してもらえませんか」


「……みたいね。いいわ、どうせコレ、平行線だったし、社に持ち帰って再検討してきます」


 吉崎様は並べられた資料を片付け封筒に入れると、ひらひらと封筒をはためかせる。


 そしてすれ違い様に私の肩を軽く叩いた。


「そっちは……健闘を祈っておくわ。誤解があるようだけど、彼に解いてもらって」


「え? 吉崎様……?」


 女の私でもドキッとするウインクをした彼女は「ははっ」と豪快に笑い、開け放たれた扉の向こうに消えていった。






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