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若社長と秘書子の攻防
第3章 ラストラウンド



「それで? さっきのは一体なんなんだ?」


 異様な雰囲気を醸し出す社長。社会から抹殺される覚悟でここに来ましたが、この世から抹殺されることは覚悟しておりませんでした。


 何重にも重ね、鍛えぬいた鋼鉄がボロボロと剥がれていく感覚を覚えていれば、社長が吐いたため息で床に散らばる鉄の塵が吹き飛ばされる。


「大方予想はつく。どうせくだらない噂に振り回されたのだろう」


「……は、おっしゃる通りで」


 言い返せば生身となった私などひとたまりもないだろうと、小さくなって俯く。


「吉崎とはただの腐れ縁だ。ただの一度も女として見たことはない」


「じゃあ……吉崎様の接待にお連れの方を同行させたり、遅くなられるのは……?」


「……あまり大きな声で言えないが、吉崎はこの上なく酒癖が悪い。泣くわ喚くわで、あれを社の他の者に見せたくないらしい」


 あの吉崎様が……? にわか信じ難いが……なるほど、そういうわけでしたか。


 人にはひとつやふたつ欠点があるもので、完璧に見える吉崎様唯一の欠点が酒癖の悪さというわけで。


 お付き合いの古い社長は吉崎様の酒癖を知っていらっしゃり、気兼ねなくお酒が飲めるのですね。








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