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若社長と秘書子の攻防
第3章 ラストラウンド
「ごめんなさい……」
早とちりして、先走って。大事な打ち合わせを中断させ、謝罪の言葉しか見つからない。
「その謝罪は僕を疑ったことに対してか?」
「う、疑うというかですね。私、自分に自信がなかったんです。だって私……社長に好かれる要素が微塵もないですから」
俯いたままぼそりと溢せば、社長はまたも深くて重いため息を吐かれる。
辛辣な言葉を浴びせられるより、ため息を吐かれるほうが精神的に厳しいものがあるのですが、わざとですか?
しかも無言で歩いて行って、革張りのふかふかなご自分の椅子に座ってしまう。
呆れて放置──苛めの新技出ましたね、これは。
呆れられても苛められても反撃の余地がないことをしたのですから我慢はします。しますが……ちょっとだけ泣いてよろしいでしょうか。
私も自分の情けなさに呆れてしまう。
あろうことか仕事中に私情を挟み、泣き言を言って困らせて。
吉崎様にもご迷惑をかけ、嫌な思いをさせてしまい、ほとほと情けなくなっていると。
「……佐和。こちらへ来なさい」
会社では呼ばれない名前を社長の口から出て、眼を見開いた。
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