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若社長と秘書子の攻防
第3章 ラストラウンド
「僕には跡を継ぐ道しかない。迷うわけないだろ」
フンっと鼻を鳴らす先生。なぜだか自分に言い聞かせているように聴こえた。
「それは違うと思いますが……」
私もやめておけばいいのに、思ったことをつい口にしてしまう。
「どういう意味だ? 簡潔に説明しなさい」
簡潔にって……。私も無駄は好まないからいいですし、自分から言い出したことだから説明拒否はいたしませんが、その光線も必要ないですよね。
ビクビクとしながらも正座する膝に手を乗せ、先生へと顔を向ける。
「道とは、自分が歩いてきた軌跡のことを言うものですよね? つまり、過去のことであり、未来の道は無数に広がっています」
いつだって現在〈イマ〉立つ場所には無数の道が用意されていて、どこに向かうかは自分次第。道がひとつしかないだなんて、おかしな話です。
「先生は跡を継ぐしかないとおっしゃいますが、本当にそうですか? 先生の口振りだと、誰かに用意されているから仕方ない、と聞こえます。でももし先生が他の道を選びたいのなら、それもいいんじゃないでしょうか。先生は自由です。先生の将来も無数に広がっているんですから」
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