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若社長と秘書子の攻防
第3章 ラストラウンド



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「あの時のことでしたか……。申し訳ありません。私、すごく生意気でしたよね」


 年上の社長に向かって偉そうに言ってしまったことを思い出し、掌で顔を覆う。


 子供だったとはいえ、本当になんて生意気だったんでしょう。顔から噴射した炎の勢いで、このビルを突き抜け地球の裏側に行き、ブラジルに永住したい気分です。


「いや。佐和のあの言葉がなかったら、僕は今ここに胸を張って堂々と座れていなかった」


 社長は眉を上げ、困ったような笑みを浮かべる。


「キミが言った通り、あの時の僕は父の跡を継ぐのに迷いがあったんだ。もっと言うと、決められた人生を送ることに、憤りを持っていた」


 社長は言う。周りの者の誰しもが、社長が歩もうとしている道を疑問に思わないのだ、と。


 この会社に入り、お父様の跡を継ぎ、ゆくゆくは会社を──社会を背負って立つ人間になるのが当然であり、社長の最も幸福な道なのだと。


 親しい友人にさえ、心の内の迷いや葛藤を打ち明けても「将来安泰なんだからいいじゃないか」と、まともに取り合ってもらえなかったとか。


 そのうち社長自身も無数にある選択肢を消し去るとこで、迷いや葛藤と折り合いをつけるようになったらしい。







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