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若社長と秘書子の攻防
第3章 ラストラウンド



 社長の話を聞きながら、ふと疑問が湧く。


「あの、でも……結局はお父様の会社に入られたわけですよね? 迷ってらしたということは、他にやりたいことがあったのでは?」


「いいや。僕の目標は初めから父の会社を僕の手でもっと大きくすることだった」


 社長は一瞬、遠くを──未来を見詰める眼をする。


 それはすぐに私に戻され、慈しむ視線を送られた。


「ただ僕は、僕自身が決めた道を歩むんだと、声を大にして言いたかっただけだった。他の誰でもなく、僕自身が決めた、と」


 社長のおっしゃること、なんとなく解る気がします。


 私の母は教育熱心で。家庭教師だって私に相談なく連れてきてしまったくらい。


 勉強を頑張りなさいと言われるのが窮屈だと思った頃もあったけれど、私はあるとき気が付いた。私も勉強が好きなんだと。


 難解な公式を解けたとき、英単語を覚えたとき、漢文がスラスラと読めたとき。私は喜びを感じていた。


 母に言われたからではなく、好きだから勉強をしていると気が付くと、窮屈さは嘘のように無くなっていた。


 多分あの感覚に似ているのでしょう。






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