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若社長と秘書子の攻防
第3章 ラストラウンド
「12年前の夏祭りの日。キミの気持ちには気付いた。だが僕は大人でどうしようもなかったのは本当だ。気付いていながら応えられないのに、恩人とも言えるキミに拒絶の言葉を浴びせるのは酷だと思い、蒸し返さないことで一定の距離を保とうとした」
「私ははっきりと言ってほしかったです。無理なら無理と」
「……すまなかったと思ってる」
「謝ってほしいわけでは……。ともかく、社長は12年待ったとおっしゃっいましたが、嘘だったんですね」
今こうして社長といられるだけで満足しなければいけないのはわかってますが、限界まで膨らんだ喜びがしゅんと萎んだ反動で、つい責めるようなことを言ってしまう。
「嘘、と言われるのは心外だ」
「だって……」
食ってかかろうとする私を社長は視線で黙らせる。「聞け」と? ええ、こうなったら最後まで聞きますけども、口でおっしゃっていただけませんか?
「家庭教師の期間を終えてからも、頭の隅でいつもキミを気にかけていた。高校でも真面目に勉強をしているだろうか。大学は希望のところへ入学できただろうか、と。そのうち就職する時期に入り……ここからは話したな?」
そうでしたね。社長が大学の職安に、この会社をエントリーするよう裏で手を回していたんでしたっけ。
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