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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第3章 《巻の弐―運命の悪戯―》
泉水の居室はその奥向きでも最も奥まった一角に位置しており、十畳はある居間と続きになった寝室、更に小さな控えの間がある。
夫婦の寝所以外にも、当主が奥方の寝室を直接訪ね、そのまま閨を共にすることもあるのだが、現当主の場合はそんなことはむろんない。桜の花も散り、外は新緑が眼に滲み入る季節となっていたが、泉水は部屋の障子を開けることもなかった。ただ日がな座り込んで、虚ろなまなざしを宙にさまよわせている。