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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第23章 《巻の壱―夢―》
「安堵致せ、そのような話、たとえ時橋にだとて言いはせぬゆえ」
よくよく考えてみれば、おかしな話だったのだ。時橋は泉水生誕のみぎりから側近く仕え、泉水を育てた乳母である。榊原家に入輿の際も付き従い、今もまめやかに仕えてくれる忠義者だ。五歳で生母を喪った泉水には、母同然の大切な存在でもある。その時橋が泉水のそのような癖を知らぬはずがない。
なのに、そのときの泉水はあっさりと泰雅に騙され、まんまとしてやられた。