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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第30章 《巻の弐―決別―》
が、かと言って、その好意や優しさに甘えることはできない。父は二十六の若さで泉水の母―つまり、最初の妻を喪った。以来、十二年間、男手一つで泉水を育ててくれた。
むろん、当時、町奉行を務めていた源太夫は公務繁多で滅多と屋敷にいることはなかった。その代わりに、乳母の時橋が母代わりとして常に傍にいてくれた。それでも、父はたまに屋敷に戻ってくると、泉水と一緒に遊んで隠れ鬼をしたり、木刀の稽古を見たりしてくれた。