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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第30章 《巻の弐―決別―》
 それより少し前のことになる。泉水はあらかじめ用意していた小袖や袴を身につけ、榊原の屋敷の塀を乗り越えたところであった。着物は湯殿とは続いた控えの間(脱衣所)の片隅に見つからぬように隠しておいた。薄紅色の小袖に濃紫の袴は、泰雅の好みで仕立てたきらびやかな打掛や小袖よりもよほどしっくりと身に馴染む。
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