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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第30章 《巻の弐―決別―》
それでも、たとえ短くとも、泰雅と夫婦として心通わせ、この男(ひと)の傍にいて、その笑顔を見ていられるだけで良いと、一緒にいて幸せだと思ったことも確かにあったのだ。けして辛いこと、哀しいことばかりだけの日々ではなかった。今、心からそう思える自分に、泉水は少しだけホッとしていた。
敢えて後ろは振り向かなかった。一体、自分はこれからどこにゆくのだろう。どこにも行く当てのない寄る辺なさを思うと、心細さが一挙に波のように押し寄せてくる。
敢えて後ろは振り向かなかった。一体、自分はこれからどこにゆくのだろう。どこにも行く当てのない寄る辺なさを思うと、心細さが一挙に波のように押し寄せてくる。