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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第32章 《巻の四―散(ちる)紅葉(もみじ)―》
引き出しに入れる簪の一つもない。だが、たった一つだけ、何があっても売らないと決めているものがあった。
泉水は姫鏡台についている一番上の引き出しを開けると、そっと小さな鏡を取り出した。
黒塗りの小さな姫鏡は、泉水の手のひらにすっぽりとおさまってしまうほどの大きさで、塗りの部分に紅葉の模様が金蒔絵で施されている。鴇色(ときいろ)の全体に紅葉が散った柄のこれも小さな巾着に入っている。